犬のワクチンは種類が多く、どのワクチンを接種しなければならないのか?費用はどのくらいなのか?と気になる飼い主さんは多いかもしれません。接種が義務化されているワクチンもあるので、犬を飼う場合はよく確認しておく必要があります。
ここでは狂犬病や混合ワクチンの基本や費用、ワクチン接種の際の注意点などをまとめてご紹介します。愛犬に適切なワクチンや予防薬を選び、危険な病気から守ってあげましょう。
Table of Contents
犬のワクチン接種は必要?
犬にワクチンを投与して病気に罹りにくくする予防接種は、愛犬の健康のためにとても重要なものです。ワクチンの中には接種が義務付けられているものもあり、飼い主さんが責任を持って接種させなければなりません。
ワクチンの役割は犬が感染症に罹るのを予防すること、そして犬から犬への感染や犬から人に感染する人獣共通感染症を防止することです。
義務ではなく、飼い主さんが任意で行う予防接種もありますが、犬が発症しやすい危険な病気のワクチンは接種することを強くおすすめします。
予防接種を受けていないとドッグランやペットホテルの利用を断られることもあるよ!
接種が義務付けられている犬のワクチン
生後3ヶ月以降のすべての犬に対して接種が義務付けられているのが、狂犬病ワクチンです。狂犬病は人にも感染する病気で、発症するとほぼ100%死亡する極めて危険なものです。日本ではワクチン接種の徹底や放浪犬の捕獲などによって昭和33年以降、国内での狂犬病の発生はありません。
狂犬病ワクチンは各自治体が行う集団接種と動物病院で行う個別接種があります。子犬を迎えて最初のワクチン接種は動物病院で獣医師に相談して行うようにしましょう。お住いの市町村に犬を登録した後は、自治体からワクチン接種の案内が送付されます。
接種時期・費用
自治体による狂犬病の集団接種は、地域ごとに日程が異なりますが毎年4〜6月の間に実施されます。ワクチン接種の案内は犬の鑑札情報にもとづいて送付されるので、引っ越した場合は犬の登録住所の変更を忘れないようにしてください。
狂犬病ワクチンの費用は集団接種が約3,000円、個別接種は動物病院によって異なりますが、3,000〜4,000円ほどのところが多いです。最初の狂犬病ワクチン接種の際に犬の登録を行う場合は、新規登録料(鑑札)で別途3,000円かかります。
任意の犬のワクチン
接種が義務付けられているのは狂犬病ワクチンだけですが、全国で発生する重篤な疾病から愛犬を守るために接種すべきワクチンもいくつかあります。一部のワクチンは接種していなければドッグランやペットホテルの利用を断られることもあるので注意が必要です。
複数ある犬のワクチンの中でも、非常に危険な病気を予防するためにすべての犬に接種が勧められるものがコアワクチンです。以下のワクチンがコアワクチンと呼ばれ、これらはすべて混合ワクチン(5種以上)に含まれています。
- 犬ジステンパーウイルス
ジステンパーウイルス保菌犬の鼻水や唾液、排泄物などに接触したり、その犬の咳やくしゃみで空気中に飛散したウイルスを吸い込んだりすることで感染します。特にワクチンを接種していない子犬は重症化することが多く、死亡率も高いです。 - 犬伝染性肝炎
成犬の場合は死亡率は高くありませんが、他のウイルスと混合感染を起こすことで死亡率がかなり高くなる感染症です。ワクチン未接種の子犬の場合、急激な症状が出て死に至ることもあるので要注意。 - 犬アデノウイルスⅡ型(犬伝染性喉頭気管炎)
接触感染や飛沫感染し、呼吸器症状を起こします。犬伝染性肝炎と同じく、他のウイルスや細菌と混合感染することで重篤な症状を示すことも。 - 犬パルボウイルス
パルボウイルスの感染によって発症し、嘔吐や下痢、白血球の減少などの症状がみられます。感染力が高く、子犬やシニア犬は特に致死率が高いので注意が必要です。
ライフスタイルなどにより感染リスクが高い犬に接種が勧められるワクチンは、ノンコアワクチンと呼ばれます。接種するかどうかは、地域の感染状況を聞くなどして獣医師と相談して決めるといいでしょう。
- 犬パラインフルエンザ
パラインフルエンザは症状が出にくいこともありますが、他のウイルスとの混合感染でアデノウイルスⅡ型の原因になることがあるとされています。症状が悪化すると肺炎を引き起こすことも。ドッグランなど他の犬と接触する機会がある犬はワクチン接種をおすすめします。 - 犬コロナウイルス
コロナウイルスを保菌している犬の糞から感染する病気です。下痢や嘔吐を引き起こすこともありますが、症状は軽め。しかし、子犬の場合は急に症状が悪化して危険な状態になることもあります。 - 犬レプトスピラ
野生動物や家畜、ダニやノミの寄生虫の尿から感染する病気で、人間に感染する可能性もあります。河辺や池、山などの近くに住んでいたり、出かけたりする場合は接種しておいた方がいいです。
コアワクチンやノンコアワクチンを組み合わせた混合ワクチンを接種することで、複数の感染症を予防できます。動物病院によって接種できる混合ワクチンの種類は異なりますが、以下の種類を用意しているところが多いです。
2種 | 3種 | 4種 | 5種 | 6種 | 7種 | 8種 | |
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犬ジステンバー | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
犬伝染性肝炎 | - | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
犬アデノウイルスⅡ型 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | |
犬パルボウイルス | ● | - | - | ● | ● | ● | ● |
犬パラインフルエンザ | - | - | ● | ● | ● | ● | ● |
犬コロナウイルス | - | - | - | - | ● | - | ● |
犬レプストピラ (イクテモヘモラジー) | - | - | - | - | - | ● | ● |
犬レプストピラ (カニコーラ) | - | - | - | - | - | ● | ● |
接種時期・費用
混合ワクチンは生後2ヶ月頃から1ヶ月間隔で2〜3回接種するのが一般的です。狂犬病ワクチンと違い、混合ワクチンは集団接種がないので接種時期はそれぞれ異なります。
混合ワクチンの費用は2〜3種混合で3,000〜5,000円程度、4〜6種で6,000〜8,000円程度、7種以上で7,000〜10,000円程度です。ワクチン接種はほとんどの場合、ペット保険の補償対象外となっています。
犬のワクチン接種はどのくらいの頻度?
子犬の時の接種が終わった後の混合ワクチンの頻度は、1年に1回は必要、3年に1回でいいなど獣医師によって意見が異なります。地域の接種率や感染例の数、他の犬と接触する機会が多いかなどを考慮して獣医師とワクチン接種の頻度を決めるのがいいかもしれません。
ドッグランやペットホテルなどの施設では、1年以内のワクチン証明書が必要なこともあるから要チェック!
犬のワクチンを打つ際の注意点
愛犬に予防接種を受けさせる際に注意すべきことをいくつかご紹介します。接種前も接種後も愛犬にできるだけストレスを感じさせないことが大切です。
体調が悪い時は避ける
ワクチン接種の予約をしていても、当日体調が悪い時は日程を変更するようにしてください。予防接種の前日や当日にいつもと違ったドッグフードやおやつ、サプリメントなどを与えるのも控えましょう。問診では愛犬の普段の様子、変わったことがないかなどを聞かれるので、愛犬のお世話を一番している方が連れて行くことをおすすめします。
持病・服薬中の薬がある場合は獣医師に相談
持病がある場合やステロイド剤などのお薬を飲んでいる場合は、獣医師に相談し、安全にワクチンを接種できるか確認してください。動物病院に行く際に普段飲ませている薬を持っていくと、より正確・スムーズに説明できるでしょう。
副作用に注意
ワクチン接種後15分以内にはアナフィラキシーショックと呼ばれる重い副作用が出る可能性があります。念のため接種後すぐは院内や病院の近くにいた方がいいかもしれません。
家に帰った後、元気や食欲がなくなる子も多いです。一晩すれば治ることがほとんどですが、明らかに具合が悪そうな時や翌朝になっても体調不良が続くようであれば、獣医師に相談してください。
ワクチン接種後は安静にする
ワクチン接種後は安静にすることが大切です。1週間ほどはシャンプーや激しい運動を避け、なるべくストレスをかけないようにしましょう。普段の散歩はワクチン接種の翌日から行って大丈夫です。
犬の予防薬
狂犬病ワクチンや混合ワクチンと合わせてチェックしておきたいのが、フィラリア症やノミ・ダニの予防薬です。いくつかのタイプがあるので、かかりつけの獣医師に聞いてみてください。
フィラリア症は蚊を介して犬の心臓などに寄生する寄生虫が原因で引き起こる病気です。フィラリア症を発症すると血液の流れが悪くなり、全身に様々な障害が出てきます。
フィラリアは5〜12月が予防期間となっており、この期間に毎月内服薬や背中に垂らすスポットタイプの薬を使うのが一般的です。予防薬には1年間有効な注射タイプのものもあります。
春から秋にかけてはノミやマダニなどの寄生を予防することも大切です。ノミやマダニに寄生されると、咬まれた部分が腫れたり赤くなったりするだけでなく、アレルギー症状が出る子もいます。
ノミやマダニを介して感染症に罹ることもあるので注意が必要です。予防期間は4〜11月頃までで、毎月背中に垂らすスポットタイプのものと1〜3ヶ月おきに飲ませる飲み薬タイプのものがあります。
フィラリア予防薬との合剤もあるよ!
ワクチン接種で愛犬を病気から守ろう!
犬のワクチンの種類や費用、予防薬などについてご紹介してきましたが、お役に立てましたでしょうか?狂犬病ワクチン以外は接種が義務化されているわけではありませんが、混合ワクチンで接種できるコアワクチンやフィラリア、ノミ・ダニの予防薬も愛犬の病気予防のために接種することをおすすめします。
子犬のワクチン接種については動物病院でスケジュールをもらい、予防接種が終わるまでは散歩には連れて行かないようにしてください。引っ越した際は犬の住所変更手続きもお忘れなく!